塙保己一学園で防災教室/目が不自由でも、自分の身を守ろう!


(2019/10/07)印刷する

 川越市笠幡の塙(はなわ)保己一(ほきいち)学園で9月27日、防災科学教室が開かれました。塙保己一学園は埼玉県立の特別支援学校で、幼稚部から高等部まであり、目の不自由な児童・生徒たちが通っています。防災科学教室はベルマーク財団と防災科学技術研究所の共催で昨年度から全国で実施していますが、特別支援学校で開くのは今回が初めてです。

塙保己一学園

 講師は防災科研の客員研究員で元香川県立盲学校教諭の花崎哲司さん。会場となる体育館の周りには、事前に花崎さんらの手によって、ミニサイズの土石流をさわって体験するための山や、泥水とともに砂利などを入れたビニールプールなどが用意されていきました。「この子たちには『こそあど言葉』が通じないんでね」と花崎さん。「ここ」とか「あそこ」とかの指示語を使っても、目が不自由だとさっぱり通じないといいます。

子どもたちの中に入って語る花崎さん

 午前9時45分、教室が始まりました。参加したのは小学部~高等部の約60人。「おはようございます」とあいさつした花崎さんは、まず「この歌、わかるかな」と言って歌い始めました。花崎さんは音楽の先生だったそうで、とても素晴らしい美声です。曲は塙保己一学園の校歌でした。

 「目の見えない人には絶対音感がある人も多い。自分の得意なことを探しましょう」と花崎さん。様々な音を子どもたちに聞かせ、何の音か尋ねていきます。トイレの水を流す音、踏切の音、手をたたく音とその聞こえる方向……。2個のハンドベルを持った花崎さんが「何の音か分かる人」と聞くと、手を挙げた子は「ソとシの音」。単にベルの音というのではない答えにびっくりさせられました。これが絶対音感です。

 「みんな、得意なことと苦手なことがあります。今度はにおいをかいでみよう」。子どもたちにスギとヒノキの木片が渡されました。子どもたちはそれぞれ、木片を鼻に近付けて確認します。

木のにおいを確かめる

 続いて花崎さんは、土砂崩れが起きた時の音を流しました。最初は雨が降るような音が続きます。「ここから音が変わるよ」。音の激しさが増したかと思うと、岩がぶつかって転がる音に変わりました。「災害の前には、水の流れる音、石のぶつかる音が聞こえ、土のにおい、木のにおいなどがします」と花崎さん。

ダンゴムシ


 次は地震について。「地震がきたらダンゴムシのかっこうをするんだよ」。全員にピーナッツが配られました。「こんな形、というのを確認してください」。それからみんなで実際にやってみます。体育館に座った状態から体を前に傾けて頭を下げ、手は首の後ろに。「地震のときは頭を守るのが大切です」。

 それから花崎さんは、自らの体験をもとに「助けて」と人に話す勇気を持つことの大切さを語りました。そのうえで、「目が見える人でも苦手なことがあります。いざというとき、君たちが手助けしたりアドバイスすることができるかも知れません」と話しました。

 そこで突然、体育館に緊急地震速報のサイレンが鳴り響きます。「ダンゴムシ!すぐなって!」。みんな一斉にダンゴムシのポーズをとります。「素晴らしい。自分で自分を守れるようになったね」。

 災害に際しては、いつも自分が要支援者であるとは限らない、自分でもできることがあるかも知れない。自分で自分を助けられる人になれれば、本当に支援を必要としている人のところに助けが回るかもしれない……。花崎さんはそう訴えるのです。

 そこから後は体験タイム。事前に作った泥水プールでは、裸足になった足の裏に伝わる、とげとげした土砂の感覚などを知ってもらいます。「冷たーい」と叫んだりしなから、子どもたちは順番にプールに足を入れていきました。

泥水の中を歩いてみる


 50㌢ほどに土を盛った山の表面には、岩石の代わりに園芸用の赤玉土がかけられています。そこにミニチュアの家を置き、上から水をかけて土砂崩れのミニ版を発生させ、それを手でさわって確かめます。水をかけると土のにおいもしてきます。「土砂で埋まったのは家の山側?谷側?」「山の方!」「1階と2階、どっちが安全?」「2階!」こんなやりとりの後、「でも本当は最初からそんなところに住まない方がいいね」。山のふもとには模型の電車と線路、駅まで置かれていました。

 体験が全員すむまでの待ち時間は読み聞かせタイム。花崎先生は途中で山とプールを学校の先生にまかせて体育館に戻り、子どもたちに「アリとキリギリス」をそらで語りかけていました。

ミニ土石流をさわって体験

 みんなが山もプールも体験し終わると、教室は終了です。全員、体育館に集合。先生に感想を聞かれた子どもたちは、「もし土砂災害とかが起きたらどう行動するかのいい勉強になりました」「大雨が降るだけで家が土砂に崩されるのには驚きました」「山が崩れるのはこわかった」「今日は大切なことを学ぶことができました、防災科学教室を開いてくれてありがとうございました」と口々に語りました。それを受けて栁澤正則校長は「今日の経験を生かして、みんな安全に身を守れるようにしてくださいね」と話しました。

 授業を終えた花崎さんは「見えにくさのために自分で自分の身を守れないというのは思い込み。体験してみれば、意外とできる、となる。先生方もよく協力してくれた。学校の防災力を担うのは先生です」と振り返りました。


 塙保己一(1746~1821)は江戸時代の国学者。現在の埼玉県本庄市出身で、幼少のときに失明しましたが、人が音読したものを暗記するなどして学問の道を究めました。古書の散逸を危惧し、史書・文学作品などを多数収める「群書類従」を編纂したことでも知られます。この郷土の偉人にちなんで2009年、埼玉県立盲学校は名称を塙保己一学園に変更しました。同校は1978年からベルマーク運動に参加しており、今年度は財団による特別支援校への援助の対象校にも選ばれています。

 今回の教室は、点字毎日(毎日新聞社発行)6月13日号に掲載された花崎さんへのインタビュー記事を読んだ同校の先生が、記事にあった防災科学教室について財団に問い合わせて実現しました。当日は点字毎日と朝日新聞が取材にきてくれました。

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