サクセスストーリーの本が人気


(2014/07/28)印刷する

学校に来る子どもが増える効果も
「ラオスのこども」事務局にインタビュー

 1998年に始まったベルマーク財団の「友愛援助」事業は、今年で17回目を迎えました。ただ、財団が支援する団体がどのような国でどのような活動をしているのか、詳しくご存知の方は少ないかもしれません。活動の一例として、特定非営利活動法人「ラオスのこども」事務局の野口朝夫さんと尾澤美春さんにお話をうかがいました。

  

――ラオスでの支援が始まったきっかけはなんですか?

 1974年から日本に留学をしていた現代表のチャンタソン・インタヴォンが、母国の子どもたちに日本の絵本を送ることを目的に、82年に「ラオスの子供に絵本を送る会」を創立したことから始まりました。ラオスはフランスの植民地でした。自国での本の出版がなく、庶民の教育も満足に行われていなかったのです。
 初めは日本の絵本を送るだけでしたが、現地の子どもたちにとって本当に大切なのは、自らラオス文化を担う人として育つことではないかということで、89年ごろからはラオ語の図書や紙芝居の出版もするようになりました。子どもたちに本を読む楽しさや広い世界を知ってもらい、いきいきと生活を送ってもらいたいと思っています。

図書室で本を読む子どもたち

  

――図書室を開設する学校は、どのように選んでいるのですか?

 ラオスの教育委員会からの要請や、学校自体から希望がくる場合もあります。現地にも事務所があり、7人のラオス人スタッフが活動をしています。国内の小・中・高校約1万1000校のうち、今まで約3000校に本を届けてきました。

  

――何冊くらいの本を届けているのですか?

 1カ所に400~500冊の図書を配置しています。ただ、同じ本が複数含まれているので、種類としては150~180くらいです。
 読書に興味を持った子どもたちはそれらの本を繰り返し楽しみます。ただ、大勢の子に対して冊数が少ないため、本の消耗が激しいのです。先生たちが出来るだけ修理をしても、毎年10%くらいの本が使用出来なくなってしまいます。
 ほとんどの先生たちは子どものころに図書室を利用したことがありません。20年前には教科書でさえ先生分しかなく、子どもが本を読む習慣がなかったのです。図書室を開設するときに運営のセミナーは開いていますが、しばらく経つと運営を学んだ先生が異動して、活動をやめてしまうこともあります。継続していけるようにするために、3年間くらいの間隔で新しい本を届け、運営で困ったことがないかサポートを行っています。

  

学校のひとこま。楽しそうです

――図書室開設時にみなさんが行っている「バーシー」とはなんですか?

 バーシーとは、ラオスの人々が生活の節目に行うお祝いの儀式です。飾りやお供え物などを囲んで幸せを喜び合います。

  

――どのような絵本が子どもたちに人気ですか? また、現地で本を購入するといくらくらいですか?

 子どもたちには、孤児の子が努力をして素敵な奥さんをもらい、裕福な生活を送ることが出来るようになるというサクセスストーリーが人気です。自分たちの生活と重ねているのだと思います。これらの話は民話や古文書に書かれている詩を元につくられているものが多く、歴史や文化がよくわかります。
 ラオスでは、本は「購入するもの」ではなく「無償で配布されるもの」という意識がまだ残っています。現地でうどんを食べると1杯130円くらい。本は1冊200円くらいです。収入から考えると安いものではありませんが、将来は出版から販売まで国内で行い、家庭で本を購入することが当たり前になってほしいですね。
 その目標への一つとして、ブックフェスティバルというイベントを開いて本を販売していますが、1回3万円近く売れることもあります。

  

――図書室を開設する前後で、子どもたちの変化は?

 一番大きな変化は、学校に来る子が増えるということです。地方の学校では全児童に教科書が行き渡らないことで、自分で考える授業というよりは、先生が書いたこと、言ったことをそのまま暗記する授業が多く、学校が楽しくないと不登校になってしまう子もいます。本があれば読書を楽しみにして登校し、文字や文化に興味を持ち、広い世界を知ることが出来るのです。先生が子どもたちへ読み聞かせを行うことで、今まで以上に信頼関係を深めることが出来ています。

  

野口朝夫さんと小澤美春さん

――事業を進める中で、不足しているものはなんですか?

 教師という職業は収入が低く、畑仕事と兼業していることもあり、時間や労力を子どもたちに費やせない先生も少なくありません。図書館運営に積極的に関わってくれる先生やスタッフが不足しているのが現状です。
 しかし、自分の時間を削ってまで子どもたちのために活動をしてくれる先生もいます。残念ながら少数派なので、学校で孤立をしてしまうことが多く、次第に気持ちが薄れてしまうこともあるのです。そんな人たちのネットワークを作り、思いを大切にしていくことがこれからの課題です。
 さらに、このところラオスの人々の中に、他国から援助を受けるのが当たり前という思いが強く見られます。これに対し、自分たちの国は自分たちで築いていくのだという気持ちを持つ人材をどう育てていくのかが、NGOとしての私たちの一番大きな課題でしょうか。

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