「水が凍る瞬間」に歓声、「クリオネ」に質問次々


(2015/02/06)印刷する

青森県八戸市の田代小中学校と松館小学校で「理科実験教室」

 青森県八戸市の南部にある「八戸市階上(はしかみ)町田代小学校中学校組合立田代小中学校」(本間孝浩校長、17人)と市立松館小学校(田村元校長、9人)で1月末、ベルマーク財団のへき地校援助のひとつ、理科実験教室が開催されました。講師は北海道立オホーツク流氷科学センター学芸員の桑原尚司(たかし)さん。クリオネ採取の第一人者です。センターでの企画展示や、大学・高校で講師を務めながら各地で出前授業をしています。今回も、オホーツク海で採取した「流氷の天使」クリオネや本物の流氷、そして、たくさんの実験器具を携えて学校を訪れました。

「過冷却」の実験。桑原さん(中央)に教わりながら、「あ、凍ったよ!」(田代小中学校)

 1月25日、まずは田代小中学校での開催です。ちょうど「日曜参観」の日でした。小学生7人と中学生10人、先生たち、授業参観を終えた保護者や地域の人たち合わせて40人が6班に分かれて参加しました。約90分、ふだん見ることのないオホーツクの自然や生き物を学んだり、水が凍る瞬間を観察したりする実験に挑みました。

 初めは厳寒の地で見られる「ダイヤモンドダスト」の再現です。大気中の水蒸気が凍り、太陽の光に反射してキラキラ光る自然現象です。発泡スチロールの箱の真ん中に金属の筒を置き、周りにドライアイスを敷き詰めます。十分冷えたところで、筒の中に、はぁーっと息を吹き込みライトで照らすと、ゆらゆらと漂う白い霧のようなものが……。もう一度、はぁーと吹きかけると息の水分が凍ってキラキラ輝きだしました。神秘的です。子どもたちは、じっと見入っていました。

 次は、水が凍る瞬間を観察する過冷却実験。氷水を入れたバケツにどんどん塩を加えてかき混ぜ、マイナス7度まで冷やします。そのバケツに海水を入れた試験管を入れ、そのまま静かに待つこと3分。そーっと試験管を持ち上げると、なぜか海水は液体のままです。そこへ、小さな氷のかけらをポトンと落とすと、一気に上から木の枝を伸ばすように凍りついていきました。「凍った!凍った!」「魔法みたい」と歓声が上がりました。

子どもたちも先生も親も地域のみなさんも桑原さんの話に夢中でした(田代小中学校)

 水は0度以下になると凍りますが、静かに冷やすと凍らないことがあります。これが過冷却状態です。氷のかけらや衝撃など、凍るきっかけを与えると、たちまち氷に変わります。今度は炭酸水で試すと、じわじわと、でも同時に2~3カ所でパッと花が開くように凍っていきます。みんな実験に夢中です。

 冬になるとオホーツク海には、海で凍って漂う流氷がやってきます。これが流氷だよ、と、桑原さんはバスケットボールぐらいの白い塊を見せてくれました。日本の周りの海で凍るのはオホーツク海だけ。北半球で海が凍る南限です。周りをユーラシア大陸やカムチャッカ半島など島々に囲まれ、アムール川から大量の雪解け水が流れ込むため、塩分濃度の薄い層と濃い層の二重構造になっています。濃度が極度に薄い表面層は水深が50mほどと浅いので、層全体の水温が下がりやすく凍るのです。

 塩分濃度が違うと本当に混ざり合わないのでしょうか。実験してみました。試験管に濃度の濃い青色の塩水をいれ、上から濃度の薄い透明な塩水をスポイトで静かに垂らしてみると、青い層の上に透明な層が乗った二層になりました。見えない膜があるようでした。塩分濃度を変えれば、何層も重ねることができるそうです。

 最後は、いよいよクリオネの観察。成長すると貝殻を失いますが、巻貝の仲間です。胴体の前部にある翼足(よくそく)を動かし、遊泳します。クリオネが入ったペットボトルが配られると、子どもたちは頭をくっつけるようにして小さなクリオネを探します。「あ、いたいた」「すみっこが好きなんだ」「踊ってるみたい」。両脇で手のひらをひらひらさせ、クリオネの真似をする子もいました。バッカルコーンと呼ばれる6本の触手を伸ばして捕食する姿は怖かったけど、ゆらゆらと泳ぐ可愛さにすっかり魅了された様子です。どれくらい生きるの? 冬眠しないの? 共食いする? 食べられる? 質問も相次ぎ、みんな初めて見るクリオネに興味深々でした。

ダイヤモンドダストが見えるかな? じっと見入ります(松館小学校)

 授業で観察した流氷とクリオネはそのままプレゼントされました。授業の終わりに桑原さんは「当たり前と思わない。なぜだろうと思うことが大切です。予想して、実験してみる。失敗したら、理由を考えてまた実験する。どうしてこうなったのかも考えてもらえれば」と理科の学び方も教えてくれました。

 2年生の長根綾香さんは、「普段の授業ではできない実験ができて楽しかった。きょう学んだことをこれからの学習にも生かしていきたい」とお礼の挨拶をしました。


 1月26日には松館小学校でも同様の授業があり、児童8人(1人欠席)と先生たちが参加しました。6年生の河村武(たける)君は「貴重な体験ができて良かった。とくに過冷却実験が面白かった。もともと好きだったけど、理科に対する思いが変わりました」と話しました。

 131年の歴史をもつ松館小は、在校生9人のうち6年生3人が卒業する今年3月末で閉校が決まっています。「クリオネ先生」の授業は、松館小での思い出の一つになりました。

桑原さん(前列中央)と記念撮影しました(松館小学校)

 ベルマーク財団の2014年度理科実験教室は、松館小学校での開催を最後に終了しました。

ベルマーク商品

「クノール® カップスープ」チーズ仕立てのほうれん草のポタージュ(3袋入)

ベルマーク検収

今週の作業日:4/15~4/19
2/14までの受付分を作業中