震災から5年後の今を見つめて/宮古市立重茂小


(2016/04/27)印刷する

寄稿・岩手県宮古市立重茂小学校 阿部真一前校長

 今年で震災から五年が経過した。校長室から見える校庭には、今も仮設住宅が建ち並んでいる。

 校長室から見えるこの風景は今も変わらない。それでも、休み時間になると、校長室の前の小さな広場には、子どもたちの元気で明るい声が響いている。遊び場の少ない子どもたちの体力づくりとして行っている全校の縄跳びの時間だ。音楽に合わせて、前回しとび、あやとび、交差とびをする。連続二重とびやはやぶさに挑戦している子もいる。このような環境の中でも、子どもたちはたくましく成長している。その姿を見ていると、難しいとは分かっていても、早く子どもたちに広い校庭を取り戻してあげたいと思わずにはいられない。

 ただ、行政も民間も、私たちにたくさんの支援をしてくれた。宮古市は、学校近くの空き地に三〇メートル四方の仮設校庭を設置してくれた。中学校は、毎年本校の運動会や陸上練習、マラソン大会に快く校庭を貸してくれる。各種団体が義援金を寄付してくれるおかげで、バスを使って広い競技場へ練習に行くこともできる。今年は、ベルマーク財団から一輪車を11台寄付していただいた。子どもたちは、今から春の一輪車乗りを楽しみにしている。

 被災地で強く感じることは、「子どもの心や体の健康は『遊び』と深くつながっている」ということだ。重茂半島は、丘陵地のため平地が極端に少ない。震災前、子どもたちにとって唯一の遊び場が「校庭」だった。震災以降、その「校庭」が奪われてしまった。(重茂の人々にとって、それが苦渋の選択だったことは十分に理解している)。この5年間、校庭に変わる何かを子どもに与えることが学校の使命だと思い、様々な取り組みをしてきた。おかげで子どもたちは、せまくても、遊具がなくても、毎日外に出て工夫しながら遊びを楽しんでいる。

 昨年、平成29年に学校の校庭にある仮設住宅を撤去する計画が発表された。いよいよ学校に校庭が戻ってくる。再び校庭が、子どもたちの笑顔と笑い声に包まれた「遊び」の中心地として機能するようにしなければならない。そのためには、重茂地区の公園的機能を加味した遊具の設置や、体力向上に必要な器具の整備など課題も多い。今後、行政や民間の支援をいただきながら、これらの課題を一つ一つ解決し、子どもの心と体を育てる環境づくりをしっかりと進めていきたい。(現・岩手大学教育学部付属小学校 副校長)

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